歯科治療について
HIVと歯科治療
- HIVに感染していても、ほとんどの歯科治療を通常通り受けることができます。特に、免疫力の指標であるCD4陽性リンパ球数が200/μl以上あれば、ほとんどの場合、通常の歯科治療を受けることができます。 しかし白血球数が著しく低下している場合などでは歯科治療の際に抗菌薬(化膿止め)の予防投与が必要になることもありますので、ご自身の病気の状態(白血球数やCD4陽性リンパ球数など)を知っておくことは重要です。歯科治療の際には担当の歯科医師、内科医師などと相談してください。
- 口の中の健康は全身の健康に影響します。そのため、口の中を清潔に保ち感染を予防することはとても重要です。これは、糖尿病などの慢性疾患を持っている患者さんと同様で、特有なことではありません。
- 病気や薬の副作用のために体調が悪いこともあるかもしれませんが、体調の変化に注意して、体調の良いときに積極的に治療を受けるなどの工夫も必要です。
- 抜歯などの口腔外科処置や局所麻酔も、ほとんどの場合は安全に行うことができます。しかし、白血球や血小板の数が著しく少ない時や、他の感染症を合併していて体調が良くない時などは注意が必要です。口腔外科、口腔内科の専門医としっかり相談しながら治療をすすめていく必要があります。
- 血友病患者さんの場合は出血傾向の問題があり、簡単な抜歯であっても凝固因子製剤の補充が必要な場合がありますので、処置の前に、かかりつけの内科医師や歯科医師などと十分に相談することが必要です。
HIV/エイズと口腔症状
- HIV/エイズに関連する口腔症状は少なくとも40個以上が報告されています。その中には口腔カンジダ症、口角炎、白板症、潰瘍性歯肉炎、ヘルペスなどのウイルス感染症、帯状疱疹、口内炎などがあります。いずれも体調やCD4陽性リンパ球の数によって変化します。
- 一般に免疫力が回復すると上記の口腔症状は消失します。また口腔衛生状態が良いと口腔症状の出現は抑えられる傾向にありますので、定期的な口腔内の検診やクリ-ニングは大切です。
- 抗HIV薬により口腔潰瘍、口腔乾燥症、味覚異常、舌炎、口腔周囲の味覚異常などがみられることがあります。
- 歯周疾患(歯槽膿漏:歯肉炎、歯周炎など)は、重要な口腔症状と考えられています。また、歯周炎が悪化するとウイルスの数が増加すると考えられています。
北海道の歯科医療体制ついて
歯科診療が可能なエイズ治療拠点病院として北海道には3つのブロック拠点病院(旭川大学病院歯科口腔外科、札幌医科大学附属病院歯科口腔外科、北海道大学病院歯科診療センタ-)、1つの中核拠点病院(釧路ろうさい病院歯科口腔外科)、8つの拠点病院(市立札幌病院歯科口腔外科、北海道がんセンター歯科口腔外科、市立函館病院歯科口腔外科、旭川赤十字病院歯科口腔外科、市立旭川病院歯科口腔外科、釧路赤十字病院歯科口腔外科、市立釧路総合病院歯科口腔外科、北見赤十字病院歯科口腔外科)があり、患者さんの歯科診療を行っています。
患者さんが自分の生活圏で都合の良い時間に安全な歯科医療サ-ビスを受けられることを目的に、北海道大学病院歯科診療センタ-では北海道保健福祉部からの委託事業として「北海道HIV歯科医療ネットワーク構築事業」を展開しています。 この事業は、拠点病院以外の病院歯科ならびに歯科診療所の中から、歯科診療機関のネットワ-クを構築して、適切な歯科診療機関を紹介するものです。
「北海道HIV協力歯科医療機関のご案内」
北海道HIV/AIDS歯科医療連絡協議会とは
北海道のブロック拠点病院、中核拠点病院、拠点病院の歯科と行政(北海道)、北海道歯科医師会、北海道病院歯科医会などの代表を中心とした委員からなる協議会です。
患者さんが安心して安全な歯科診療サ-ビスを受けられるように北海道HIV歯科医療ネットワーク構築事業の推進や研究会の開催を行っています。
北海道HIV歯科診療協力医とは
エイズ治療拠点病院の歯科以外に道内に、病院歯科7機関、歯科診療所44機関の計51機関のHIV歯科診療協力医の登録があります。(令和4年2月現在)
協力医のネットワ-クのリストは非公開ですが、エイズ治療拠点病院、各保健所、北海道歯科医師会に常備されています。北海道HIV/AIDS歯科医療連絡協議会では、協力医の増加および地域差の是正を行うべく、協力医の登録を常に募集しています。
また、HIV/エイズに関する正しい知識の教育、歯科医療の質の向上などを目的に協力医に対する研修会や北海道歯科医療研究会を定期的に開催しています。
北海道におけるHIV感染症歯科医療体制(令和4年2月現在)
歯科診療を受けるには
患者さんは、かかりつけの拠点病院などの内科医師、歯科医師、看護師、ソ-シャルワ-カ-などに受診の希望を伝えた後、紹介された協力医の歯科医療機関に予約の電話を入れて診療を受けてもらいます。
その際に「北海道HIV歯科診療協力医のネットワ-ク」を利用する旨を必ず伝えるようにお願いします。患者さんの全身状態や投薬内容の情報が必要な場合は、かかりつけの内科医師から情報提供をしてもらうこともあります。
「北海道HIV協力歯科医療機関のご案内」
困ったことがあったら
歯科関連(歯、歯肉、口腔内、顎関節など)のことで困ったことがありましたら、かかりつけの拠点病院などの内科医師、看護師、ソ-シャルワ-カ-などにご相談ください。 また北海道HIV/AIDS歯科医療連絡協議会の事務局である北海道大学歯学部口腔診断内科までご相談ください。
北海道大学 歯学部口腔診断内科 : 011-706-4280