血友病薬害被害者の方が利用できる社会福祉制度
医療サービス
特定疾病療養(長期高額疾病)
医療保険には「高額療養費支給制度」といって、病院の治療費が一定額を超えた場合、その超えた額を給付する制度があります。限度額は一般と上位所得者および低所得者の区分で設定されています。一般の限度額で1か月に[80,100円+(医療費-267,000円)×1%]円を超えた額を支給対象にしていますが、国の指定した長期療養疾病については1か月の自己負担限度額が10,000円に軽減されます。
血友病などの血液凝固異常症をもつ患者さんは、この長期高額療養疾病に該当します。手続きをすると「健康保険(国民健康保険)特定疾病療養受給者証」が交付されます。医療保険に付随する制度なので手続きの窓口は各医療保険の窓口です。
高額療養費の特例としての高額長期疾病(特定疾病)に該当する。
自己負担限度額:月に10,000円
窓口:加入している各医療保険窓口
先天性血液凝固因子障害等治療研究事業
原則20歳以上で血友病および類縁疾患の方が対象です。この制度を利用することにより治療が全額公費負担で受けられます。手続きの窓口は本人の住所地の保健所ですが、自治体によっては都道府県庁の担当課が窓口のところもあるので確認が必要です。申請すると「先天性血液凝固因子障害等医療受給者証」が交付されます。
20歳未満でも、血液凝固因子製剤の投与によるHIV感染症の方は対象となります。
医療保険等の自己負担分は治療研究事業で負担する事で患者の医療費負担を軽減し、精神的・身体的不安を解消することを目的としている。
※治療研究事業の対象となる医療は先天性血液凝固因子欠乏症、血液凝固因子製剤の投与に起因するHIV感染症並びにHIV感染症に付随して発症する疾病。
窓口:各都道府県難病担当主管課
※1年ごと(1月~2月)に更新が必要です。
更新時に「先天性血液凝固因子障害等患者個人票(以下、調査票とする)」が必要ですが、以下の4つの書類のいずれか1つを用意すると「調査票」作成を病院に依頼しなくても手続きができます(書類作成費用もかからなくなります)。
- 裁判所による和解調書の抄本
- 「血液製剤によるエイズ患者等のための救済事業」の対象者であることが示された通知書の写し
- 「血液製剤によるエイズ患者等のための健康管理支援事業」の対象者であることが示された通知書の写し
- 「エイズ発症予防に資するための血液製剤によるHIV感染者の調査研究事業」の対象者であることが示された通知書の写し
治療用補装具等の療養費払いにおける先天性血液凝固因子治療研究事業の優先
今までは重度心身障がい者医療のみ適用となり課税世帯の方は自己負担が発生していましたが、2019年より療養費払いに先天性血液凝固因子治療研究事業が適用されることとなりました。
薬害被害者の方については治療用装具療養費払いにおいて先天性血液凝固因子治療研究事業が適用になるため装具購入費の全額が返還されます。
関節用装具やコルセットを医療保険で作成する際はいったん全額を支払い、その後健康保険へ医師の意見書と装具購入費用を請求します。
生活サービス
調査研究事業(健康管理費用)
エイズを発症したことがない方が対象です。
血液製剤によるHIV感染者の健康状態や日常生活に関する調査を実施することにより、エイズ発症予防に資するための日常健康管理及び治療に関する研究を行うもの。
治療対象者には健康管理費用が支払われる。
健康管理費用
CD4リンパ球数が200/μL以下:52,000円/月
上記以外:36,000円/月窓口:独立行政法人医薬品医療機器総合機構健康被害救済部受託事業課(TEL: 03-3506-9415)
健康管理支援事業(発症者健康管理手当)
過去にエイズを発症した病歴のある方が対象です。
血液凝固因子製剤によるHIV感染者であり、エイズを発症した方のうち裁判上の和解が成立した方に対して、エイズ発症に伴う健康管理に必要な費用の負担軽減や福祉の向上を図るため、発症者健康管理手当の給付を行っている。
発症者健康管理手当:150,000円/月
窓口:独立行政法人医薬品医療機器総合機構健康被害救済部受託事業課(TEL: 03-3506-9415)
先天性の疾病治療によるC型肝炎患者に係るQOL向上等のための調査研究事業
先天性血液凝固異常症の治療の為の血液凝固因子製剤を投与で健康被害を受けた方の日常生活の状況等に関する調査を実施することによって健康被害者のQOLの向上策及び必要なサービス提供の在り方に関する検討を行うもの。
対象者:1、2の要件を満たしており、調査に回答された方
- 先天性の血液凝固異常症である方
- 先天性の血液凝固異常症の治療の為、長期にわたり血液凝固因子製剤の投与を受けたことによりC型肝炎ウイルスに感染した方で、慢性C型肝炎 が進行し、肝硬変又は肝がんに罹患している方
調査研究協力謝金:51,500円/月
窓口:独立行政法人医薬品医療機器総合機構健康被害救済部企画管理課(TEL: 03-3506-9460)
血友病薬害被害者手帳について
血友病薬害被害者手帳は和解から20年となる2016年に血友病HIV感染被害患者に対して配布された。
手帳には被害者が医療・福祉・介護など各種公的サービスを必要に応じて適切に利用できるよう、和解に基づく恒久的被害者対策や主な公的支援サービスの案内およびその問い合わせ先が記載されている。
血友病薬害被害者に対する医療については、「患者の医療費負担の軽減を図り、精神的・身体的な不安を解消することを目的として、医療費の自己負担分を先天性血液凝固因子障害等治療研究事業の対象として公費負担することとしています」(血友病薬害被害者手帳より抜粋)と記載されています。
他の医療機関の診察を受ける際には上記説明と医療機関側の手続きが必要です。受診する予定がある際には定期受診先の医療者に事前に相談しておきましょう。