針刺し損傷時の対応について
HIVの針刺し損傷時の対応について
針刺し損傷等HIV感染の可能性のある曝露が発生した場合、その感染リスクが高いと考えられる場合は抗HIV薬の内服をすることが推奨されています。
内服する場合には可及的速やか(可能であれば2時間以内)に内服を開始することが望ましいと言われています。
医療機関ごとに独自の職業上曝露(針刺し・切創)対策マニュアルを作成して、その実施も含めてすべての職員に周知徹底することが大切です。
針刺し・切創及び皮膚・粘膜曝露時の対応
【要点】
ステップ1: 直ちに曝露部位を大量の流水で十分洗浄する。
ステップ2: 曝露状況から感染リスクを評価し、抗HIV薬の予防内服の必要性を検討する。
ステップ3: 必要に応じて感染対策担当医師等と連絡を取り、予防内服に関する指示を仰ぐ。
ステップ4: HIV担当医師と連絡が取れない場合には、1回目の予防内服を受傷者の判断で行う
ステップ1
最初に、曝露部位を大量の流水で洗浄してください。
- 皮膚に血液あるいは感染性体液*が付着した場合、直ちに曝露部位を大量の流水と石けんで十分に洗浄する。
- 粘膜・眼球に血液あるいは感染性体液が付着した場合、直ちに曝露部位を大量の流水で十分に洗浄する。
- 口腔に血液あるいは感染性体液が入った場合、大量の水とポビドンヨード含嗽水(イソジンガーグル)で含嗽する。
- 血液あるいは感染性体液の付着した針を刺した場合、直ちに曝露部位を大量の流水で十分に洗浄し、消毒用エタノール等で消毒する。
*感染性体液とは
- 以下のものは感染性体液として扱う:
血液、血性体液、精液、膣分泌液、脳脊髄液、関節液、胸水・腹水、心嚢液、羊水 - 以下のものは、外観が非血性であれば感染性なしと考える:
便、尿、鼻汁、痰、唾液、汗、涙
ステップ2
曝露状況から感染リスクを評価し、抗HIV薬の予防内服の必要性を検討してください。
【曝露のタイプについての評価】
A. 正常な皮膚へ曝露
B. 粘膜や傷のある皮膚への曝露
C. 針刺し・切創
【曝露源患者の感染状況の評価】
A. 曝露源患者がHIV陽性
B. 曝露源患者のHIV感染状況が不明(HIV感染の検査が不可能な死亡した患者の血液・体液などによる曝露)
C. 曝露源患者が不明(廃棄箱の中にあった針による曝露などで誰の検体かわからないときなど)
D. 曝露源患者のHIV陰性が確認されている
【抗HIV薬予防内服の推奨】
曝露のタイプ | 曝露源患者の感染状況 | |||
---|---|---|---|---|
HIV陽性 | HIV感染状況不明 | 曝露源患者不明 | HIV陰性 | |
正常皮膚 | 予防内服なし | 予防内服なし | 予防内服なし | 予防内服なし |
粘膜・傷のある皮膚 | 予防内服を推奨 | 予防内服なし(*注) | 予防内服なし(*注) | 予防内服なし |
針刺し・切創 | 予防内服を推奨 | 予防内服なし(*注) | 予防内服なし(*注) | 予防内服なし |
(*注)
曝露源患者のHIV感染状況が不明の場合や、曝露源患者が不明の場合であっても、HIV陽性患者由来の可能性が高いと考えられる場合には抗HIV薬の予防内服を考慮する。「予防内服を考慮」という指示は、予防内服が任意であり、受傷者と担当医師との間においてなされた自己決定に基づくものであることを示す。もし予防内服が行われ、その後に曝露源患者がHIV陰性とわかった場合には、予防内服は中断されるべきである。
ステップ3
予防内服が必要と判断されるか、判断に迷う場合には感染対策担当医師等に連絡し、予防内服について相談してください。
【北海道大学病院における予防内服の選択薬】
<推奨レジメン> デシコビHT (TAF/FTC) 1回1錠、1日1回 + アイセントレス (RAL) 400mg 1回1錠、1日2回
<代替レジメン>
- ツルバダ (TDF/FTC) 1回1錠、1日1回 + アイセントレス (RAL)400mg 1回1錠、1日2回
- デシコビHT (TAF/FTC) 1回1錠、1日1回 + テビケイ (DTG) 1回1錠、1日1回
- ツルバダ (TDF/FTC) 1回1錠、1日1回 + テビケイ (DTG) 1回1錠、1日1回
※ 曝露源患者のHIVが、薬剤耐性を獲得していると判明している場合は、上記の限りではなく、感受性のある薬物の投与を考慮する。
※ 受傷者が慢性B型肝炎またはHBVキャリアの場合は、抗HBV作用を有する薬剤(TDF、TAF、FTCおよび3TC)の投与は避けた方がよい。
※ 妊娠14週未満の妊婦に対しては、デシコビの安全性は厳密には確立していないので、ツルバダ+アイセントレスの組み合わせにしてもよい。
ステップ4
予防内服が必要と判断されるか、判断に迷う場合に、感染対策担当医師等と連絡が取れない場合は、1回目の予防内服を受傷者の判断で行ってください。
※ 予防内服は1か月継続し、受傷後1か月、3か月、6か月後にHIVスクリーニング検査を行います。
詳細につきましては、下記 北海道大学病院のマニュアルもご参照ください。
お問い合わせ先
北海道大学病院では、北海道内の他医療機関で発生したHIVの針刺し損傷・感染性体液曝露時の対応相談や、受診相談を受け付けています。
月~金 8:30~17:00 | HIV相談室 011-706-7025 |
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夜間休祭日 | 011-706-5610(事務当直) 電話口で「職員のHIV曝露の対応について相談したい」旨を伝えて下さい。担当窓口へおつなぎします。 |
予防薬設置について
北海道から抗HIV薬が供給されている医療機関一覧です。
一覧以外にも、北海道大学病院をはじめとするブロック拠点病院や拠点病院などにも常備している場合がございますので、予防薬が必要な場合はお近くの医療機関へお問い合わせください。