検査のススメ・結果説明について

HIV検査のススメ

エイズを発症してからHIVの感染に気がつくいわゆる「いきなりエイズ」の患者さんの多くは、エイズ発症前に他の性感染症などで医療機関を受診していることが少なくありません。
HIV感染症は長期間無症状の時期が続くので、疑って検査をしなければHIV感染症の診断をすることは不可能です。「いきなりエイズ」の患者さんを減らすためにも、下記の様な時には、HIVのスクリーニング検査(HIVスクリーニング検査)を行うことをおすすめします。
なお、性感染症を認める場合、性感染症の既往がある場合又は性感染症が疑われる場合には、HIVスクリーニング検査を保険診療で行うことができます。また、検査を行う際には患者さんの同意を得てから行いますが、文書での同意の必要はなく、口頭での同意で問題ありません。

性感染症を診断した場合

梅毒、クラミジア、尖圭コンジローマ、淋病、性器ヘルペス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎など

免疫能の低下が疑われる場合

帯状疱疹、口腔カンジダ症、繰り返す肺炎、不明熱、脂漏性湿疹、慢性の下痢、慢性のリンパ節腫瘍、原因不明の体重減少など

HIV感染症の診断

HIVスクリーニング検査で陽性の場合には、下記の手順に従ってHIV感染症の診断をします。

HIVスクリーニング検査で陽性であってもHIV感染症が確定したわけではありませんので、患者さんへの説明の際には十分な注意が必要です。

HIVスクリーニング検査では約0.3%で偽陽性とでる場合があります。特に妊婦さんや、膠原病・血液悪性疾患等を有する患者さんでは偽陽性率は高くなります。
また、感染直後(感染から6〜8週)の場合には、HIVに感染していてもHIVスクリーニング検査で陽性とでない時期(ウィンドウピリオド)があります。 HIV感染の急性期が強く疑われる際には、HIV-RNA定量検査(急性期診断には保険適応外)を行うか、後日スクリーニング検査の再検を行います。

HIV感染症診断のためのフローチャート
診療における HIV-1/2 感染症の診断ガイドライン 2020 版(日本エイズ学会・日本臨床検査医学会 標準推奨法)より抜粋

HIV感染症/ エイズと診断したら

HIV感染が確定して、患者さんにHIVに感染していることを伝える際には、HIV感染=エイズではないことや、エイズ=死の病気ではないことを十分に説明することが大切です。
次の受診につなげることが重要ですので、できるだけ速やかに専門医に紹介してください。

拠点病院一覧

HIVスクリーニング検査が陰性の時

HIVスクリーニング検査が陰性であっても、先に述べたようにウィンドウピリオドがあるため、完全にHIV感染症を否定できるわけではありません。
感染の可能性がある場合には、その機会から2か月以上経過してから再度検査をするよう受検者に勧めてください。
また、HIV検査が陰性だった場合、パートナーの方も陰性とは限らないということを説明してください。
HIV陽性の方との性交渉でも、その状況により感染したりしなかったりする場合があります。
つまり、パートナーが陽性でもこれまで偶然自分に感染しなかっただけということも十分考えられるということを説明する必要があります。
HIV検査の機会に、感染予防について正しい知識をもって安全な日常生活を送ってもらえるような説明することが大切です。

医療機関からのHIV感染症/エイズに関する相談について

北海道大学病院では、医療機関からのHIV感染症の診断、治療、患者さんの紹介、針刺し損傷時の対応など、HIV診療に関する相談を受け付けています。 また、HIV検査で陽性と判明した患者さんへの検査結果説明時の対応についての相談も受け付けています。