HIV治療について

治療の目的

身体の中のウイルス量を抑え続け、免疫力を回復し、それを維持していくことが目的です。

治療開始のタイミング

HIVの治療開始のタイミングは、時代とともに大きく変わってきています。昔は、抗HIV薬の副作用が強く、内服自体が困難なこともあったため、CD4陽性リンパ球数が200/μL程度まで下がってから治療を開始するという考え方もありました。最近では、より副作用の少ない治療薬が開発されており、さらに、早期治療による様々な利点(感染拡大の抑制や重篤な合併症の減少)も明らかになってきました。最近のガイドラインでは、すべてのHIV感染患者さんに対して抗HIV薬の開始が推奨されるようになっています。

ただし、CD4数が500/μLより多く、かつHIV-RNA量が5000コピー/mlより少ない患者さんの場合は、身体障害者手帳を取得できない場合があり、医療費助成制度を使えない可能性もあるので、事前に十分に確認する必要があります。

抗HIV薬について

HIV感染症の治療は3~4種類の抗HIV薬を組み合わせて内服する多剤併用療法が基本です。最近では、2〜3種類の成分が1錠の中に含まれた合剤が多数でており、1日1回1錠内服での治療も可能となっています。また、最近の抗HIV薬は以前のものと比べて治療効果が高いため、ある一定の条件を満たす患者さんでは、2種類での治療でも治療効果は3種類の薬と比べてひけをとらないとされています。さらに、ウイルスがすでに十分抑制されていることが条件ですが、1〜2か月に1回の筋肉注射の薬も登場しております。

抗HIV薬は大きく下記5つに大別されます。

  1. 核酸系逆転写酵素阻害剤
  2. 非核酸系逆転写酵素阻害剤
  3. プロテアーゼ阻害剤
  4. インテグラーゼ阻害剤
  5. 侵入阻害薬

1996年に多剤併用療法が開発されてからは、HIV感染患者さんの予後は飛躍的に改善してきています。しかし、抗HIV薬はHIVを体内から完全に排除できる薬ではありません。よって抗HIV薬は、開始したら一生継続していくことになります。

きちんと内服できないと

抗HIV薬を中途半端に内服してしまうと、薬が効かなくなってしまいます!!
ウイルスが薬に対し耐性を獲得してしまうためです。ちなみに、内服10回のうち1~2回飲み忘れてしまうだけで患者さん2人に1人は治療に失敗してしまうのです。
ウイルスが耐性を獲得するということは、使える薬の選択肢が狭まるということです。すなわち中途半端な内服は、今後何十年とウイルスを抑えつける武器を自ら捨てているのと同じことになります。
きちんと内服していくには「アドヒアランス」が不可欠です。
1〜2か月に1回の注射薬もありますが、内服薬と同様に治療間隔を守らないとウイルスが耐性を獲得する可能性がありますので、定期的な通院による投与が必要です。

アドヒアランス
患者さんが積極的に治療方針に参加し、自らの意思に従って治療を実行(内服)し、それを続けていく姿勢を表した用語です。

きちんと内服していくには・・・

治療の決め手は何と言っても「アドヒアランス」です。
自分のライフスタイルを確認しましょう。
内服できる状況や環境を探していくことで、内服を生活の中に取り込んでいきましょう。
内服や定期受診を忘れないために・・・
携帯電話のアラーム機能などを利用して、内服や定期受診を忘れないようにしましょう。

医療費はどれくらいかかるの・・・

一定の条件を満たせば、身体障害者の認定を受けることができます。
認定を受けた場合、医療費の負担は大きく軽減されます。
申請に関するプライバシーのことなども含めて病院のソーシャルワーカーなどに相談することができます。
経済的な理由で受診を止めてしまう前に医療スタッフに相談しましょう。

医療費について